「ここが噂の悪党共がいる山ね」

 黒衣を纏った女は朝焼けに照らされる山をじっと眺める。近づく雨の匂いが鼻をくすぐる。山に近づくと彼女の視界に、大地に刻まれた複数の跡が見えた。

「あら、これって連中の足跡? これを追って行けば大丈夫そうね」

「手がかりは他に無いし、それを追おうか」

 女の後ろから、柔らかな笑みと共に声をかける一人の男。女も振り返り、まるで敵を討ちとった瞬間のような笑顔を見せると男を置いて行きかねないほどの勢いで走り出した。

 読みの全てが正しい訳ではないにしろ、二人は目的の場所へと向かっていく。男も山を見上げる。見つめる先にはただ一点のみが映っていた。

 

 女は黒衣を引きずる事を気にせず走る。

(ようやく、真実に近づけた――絶対、滅ぼしてやる)

 唇を噛む。血が出たものの、そんな事は全く気にしてなどいなかった。

 

 

  *

 

 

 山中に連なる森林の一角に一つのテントが立っていた。その中からはいくつかのいびきが響いている――常人ならばこんな所では寝られないと言う事だろう。公害レベルの騒音源の傍では青年と、青年と言う年齢では無さそうな男が朝食を作っている。その最中、男は突然それを問いかけた。

「貴様はどう思う」

「どう、って……何に対して」

 外套の男は問いに対する問いに反応しようとはしなかった。その様子にネーヴェは頬杖を突いて苦言を呈す。

「名前と質問のどちらかを明かせって言われたらどっちを明かす気だよ?」

「……」

 無言を再び返される。深くため息を吐くと、青年は諦めて再度口を開く――邪晶石の事なら、と前提を付ける。

「どう思うも何も、未知だ。気になるとすれば、出所ぐらいか」

 ただの子悪党がそんな物をどこで見つけたのか、それを問い詰めなければならない。自分達に課された任務は、その根絶。

「暗き力を与える宝石。そのような物に頼る愚か者の事はどう思う」

 無駄な問答をしたくないのか、今度は細かく説明を付けられる。どう思うかと言えば……彼は少し考えた。

「運が悪かったんだろうな……痛い」

 不意に光が差し込む。思考に意識を寄らせすぎたか、目を眩ませ、誤って包丁の刃を指に滑り込ませる。今度は外套の男が溜息を出す番だった。

「絆創膏だ」

「すまない」

 不意に光が差し込む。日が高くなり始めた合図――昨夜作った氷の彫像が光を反射する。それはせめてもの抵抗だろうか? ネーヴェは絆創膏を指に巻きながらぼんやりと考えていた。

 

 

 朝食をとった一行はテントを放置したまま歩き始めた。当然だが、捨て置くのではない。戦闘の邪魔になるために一時的に放置するのみである。盗られたら……その時はその時だとアウルは言う。

 昨夜、襲撃を仕掛けた山賊達はしっかりと足跡を残していた。それを追って間もなく、四人は一つの穴の前に辿り着いた。

「洞窟の中にアジトがあるのか。雰囲気が出て来たな」

 待ち受けるであろう激闘の予感にライザは身を震わせるていた。一方でアウルはさっさと終わってくれる事をおどけて願うのみ。そんな二人を後目にネーヴェは早速洞窟の中に身を入れた。

「って、ちょっ、ネーヴェ!」

 いくら何でも警戒しなさすぎである――アウルの、いや三人共通の予想通り、すぐに洞窟内から金属音や魔力の収束する音が聞こえ始めた。

「まあ、考える時間も惜しいな」

 ライザも、更に外套の男も続けて飛び込んでいく。肩を竦めるしかない、しかしそれでも最後は残った一人も飛び込む。もう少し楽にやる手段もあるだろうに、でもこれが一番早いのかもしれない。そもそも、緻密な作戦を立てなければ勝てないなどとは思ってもいない以上、これもアリなのだろう。

 

 血飛び肉飛び凍てつく。声を上げる間すら無く次々と倒れ伏す山賊達に、或いは同情する者もいるだろう。しかし、それを顧みてもなお彼らの剣は止まりはしなかった。

「平和的解決がどうとか昨日言ってたけどさあ」

 アウルは不意にネーヴェの頬に指を突き立てる。

「今完全に問答無用で凍らせてるけどいいんスかねえ」

「無理、みたいだからな」

 無理、の内容をアウルが聞くとネーヴェは本日何度目かの溜息を放った。いかにも面倒くさそうに。

「邪晶石っていうのは、思ったより鬱陶しい物だって事だよ」

 別に命を絶ちたくて戦っている訳ではない――必要の無い念を押す。まあな、と返され、会話はそこで切られた。突如、前方の視界が開けるとその先には紫色の靄がかかっているかのようだ。いや、本当にそうなのかもしれない。

「うわあ……瘴気か何か?」

「瘴気で正気を失う――なんてな」

 まるで予想できていたかのように無駄口を叩く。ただの洒落、いや、アウルはそこでようやく無理の意味を理解した。

「マジでそういうもんなのかよ……ほんっとう、面倒くさ」

 ピリピリとした雰囲気が漂う。軽口、無駄口、それもまた戦うための道具の一つ。場に飲まれないための処世術。しかしそれも限度を守り、いざ相対すればそれを睨む。

 ネーヴェに対して倍ほどにも思える巨体。ネーヴェも別に小さくは無いのだが、比較すれば子どもと親以上に違うであろう、しかしそうであっても別段の恐怖を感じるような事も無い。

 

「やってくれたじゃねえか、ガキどもが」

「ガキにやられる方が悪い」

 まるで玉座の如く窪んだ、天然の岩の椅子に大男が腰かけている。ネーヴェと山賊団の頭は真っ向から睨み合う位置にいる――山賊の目は霧がかる色と同じような闇を灯しているように見えた。

「おいガキ、俺様が誰か分かっているのか?」

 天然の玉座の主は立ち上がり、その傍らに立て掛けられた斧に手を掛けた。その時、不意にライザが口を開く。

「何か付いているな」

 洞窟内に流れる瘴気の風の気配を読めば、それは一つの結論に行き着いた。それこそが邪晶石である、と。

「ああ……あれが目的の品物だ。さっさと潰すぞ」

 

「クソガキどもが……舐めやがって!」

 大男は怒りの声を上げる。自らの言葉を無視し、無礼な振る舞いを行ったそれらを破滅させんと斧を振りかぶる。その動きは巨体に見合わず素早く、一個師団を敗走させたという話に現実味を持たせるには十分であった。大男は手始めにただ一人の女を狙い得物を振り下ろした。

「地獄に堕ちて後悔しやがれ!」

「典型的なチンピラ……付き合いきれん」

 ライザは身を捻ると背中に風圧を受ける。その一撃の重さの程を直撃で無いにしろ身で感じる……当然、当たってしまえば真っ二つであろうそれではあるが、当たらなければどうと言う事は無い……はず。しかし、その風圧に彼女は違和感を感じた。

「ん? 妙な……!?」

「あっ!」

 彼女は不意に足を掴まれたような感じが……いや、それはただの比喩では無い。アウルは彼女の足を絡め取ろうとする物に気付き声を上げる。背負った槍を持つと、瘴気で出来た触手のような物を突き刺した。生きているかのように蠢くそれは抵抗するかのように今度は槍に絡みつこうとするが、刃先で更に切り裂かれると霧散した。

「妙な事しやがって!」

「悪い。さすがに油断しすぎたようだ」

 すぐに二人は身を引くと構え直す。しかし再びその目が敵を捉えた時、それは今一度斧を振り上げていた!

「パワー馬鹿め、うざってぇ!」

 アウルは思わず悪態を吐く。しかし彼はふとその後ろに気付いた――敵は気付かない。

 

「所詮この程度だ」

 大男はその瞬間には何が起こったか気づかなかった。突然の痛み、そして腕から、足から抜ける力。下を見ると、自らの体を貫く刃。後ろを見れば、表情の知れない者が自らの体にナイフを突き立てていた。

「なっ……ば、馬鹿、な」

「馬鹿は貴様だ」

 武器を持って、かつ言葉で持っても斬り捨てる。外套の男はその刃物を引き抜くと懐から取り出した布でその血を拭いはじめた。小さく舌打ちをする。汚れた……と。

「斧振ってれば勝てるほど甘くは無いな」

 ネーヴェもその得物を構えてはいたが、それを使う間もなく敵は倒れてしまった。その声は残念そうでもあり、逆にホッとしたような声にも響く。

「こんな世間知らずのガキどもに……!」

 山賊団の頭からすれば全く意味不明の状況であった。強い力を持つ自分が人生経験もまだ多くないであろう子ども――実際は成人しているのだが――に敗北した。怒りと絶望がその心にこみ上げていく、それは彼自身も知り得ない。

「さて、話せる内に吐いてもらおうか。その斧に付いた宝石について教えてもらおう」

 ネーヴェは屈み込み問う。合わせた目は怒りと憎しみに満ちていたが、そのような物は気にしていない。仮にいきなり首を掴まれようと、もはや力の残っていない相手なのだから。

「それで強くなったのか?」

「これは……力を俺に与えてくれる……俺を最強にしてくれる」

「はっ、馬鹿じゃねぇの。最強って、俺達に負けてるじゃないスか、笑わせやがって!」

 嘲笑でもってアウルがその傲りを一刀両断した。

「そんな石ころ一つで最強になれるんだったら、随分と世界ってのは小さいんだな!」

言わずとも、他の三人も同様の考えだったのだろう。ネーヴェもその通りだと呟くと更に問いを重ねる。

「で、それはどこで拾った? もしくは誰から貰った。これは重大な情報……教えるのなら命「だけ」は見逃してやってもいい」

 わざわざ一部を強調する。しかしそれは間違いなく分の悪い相手からすれば魅力的とは言える言葉、憤りながらもただ一つの手段を愚かな山賊の頭は口を開こうとする。

「奪ったのさ」

「どんな奴から?」

「それ――はッァァァァ……!?」

 

「げっ、まさか言い切る前にくたばるか?」

「いや……様子がおかしいぞ」

 

「うぐうおおおおお……っ!?」

 突如大男は苦しみだし、頭を押さえはじめていた。ネーヴェはそっと一歩後ろに下がる。

「おい、どうした? 持病でもあったのか?」

「いやあ、ただの発作っぽくはとても見えないが」

 

 その時、不意に外套の男は、突如斧についた邪晶石が発光し始める所を見た。直感的に理解した――それは間違いなく危険である、と。それを破壊するべく、外套の男はナイフを斧に投げつけた。邪晶石を狙い、それは空を切り裂き飛ぶ!

「どうした!? ……あれは!?」

 ライザも気づき声を上げる――そこで斧を視界外としていた他の二人もそれに気付く、しかし。

 

 

「うおおオオオオ!!」

 本能が脅威への警鐘を鳴らす。ネーヴェは飛び退くと、しかし激痛が彼の体を地面に叩きつけた。何が起こったのか理解できない、しかしそれは間違いなく危険であると言う事を彼は理解した。

 

 大男は再び立ち上がっていた――いや、気付けばそれは大男と呼べるかどうかは怪しくなっていた。その体は肥大し、ただでさえ圧倒的であった巨体は既に人の領域を超えていた。筋肉も膨張し、その腕がネーヴェを叩きつけていた。もう片方の腕もあわばアウルを潰しかけ、その脅威性を存分にアピールして見せる。

「ネーヴェ!? くそっ、何だこいつは!」

 

 それは人の輪郭を保つ事も放棄し、巨大な角を生やせば口元も大きく裂け、全身が鱗に覆われていけばその先は鋭い爪を光らせる。まるで化け物……まるで、ではなく完全に化け物である。

 耳を突く不愉快な呻き声を上げ、それは憤怒でもって足元の蟻を潰すべく動き出した。

 

「ほう、中々……ネーヴェ、死んでいないな?」

 ライザはまるで豪華食材だらけのフルコースを目の前にしたかの如く舌なめずりをする――その興奮で一瞬叩き潰されていたネーヴェを忘れていた。

「この程度で死ぬか」

 淡々とした口調でネーヴェも受け応える。しかしその体は不意の一撃に対応しきれず軋んでいた。体の節々に痛みが走り、可能であるならば動かずにいたい。

(参ったな)

 無活躍になりそうだ――そう思う。この状況にあって重い一撃を最初に受けてしまったのは完全に不幸だろう。戦局はともかく、自身だけを考えるならばこれはかなりの損失だった。

 そう、戦局はともかく、である。

(まあいいさ、出来る事をやるのみだ)

 ネーヴェは精神を研ぎ澄ませる。すぐに来るであろうチャンスのために。

 

「仕方ねえ、俺がバシッと決めてやらなきゃな」

 槍を構えたアウルは異形の存在と化した敵への一撃を狙う。槍の柄を地面に突き立てるとアウルは地を蹴り、棒高跳びの要領で一気に跳び上がる!

 肥大した腕が宙を舞うアウルを叩き落とすべく動き出す、しかしその動きは急に止まる。

「おっ?」

 ふと目を傾ければ、その腕が氷柱に埋まっていた。それは地面と天井を繋ぎ、まるで腕を洞窟の一部としてしまったかのように。

「よっしゃ……一撃だ!」

 突き立てた槍を引き戻すように掴み、再び構える――棒高跳びの次は、槍投げだった。

 

「ウオオ……ゴアアアアアッ!」

 回避を試みる怪物はしかし、足に走る衝撃で呻き声をあげる羽目になった。

「デカブツは辛い物だな、こうも死角が多いとは」

 見ればライザがその足に剣を突き立てていた。あまりに派手な一撃を狙うアウル、そして不意に封じられた腕に気を取られていた怪物は、別の動きに気を回す事が出来ていなかったらしく、始めの一撃は何だったのかと思わせるほどに僅かな時間で追いつめられていた。

 

「うっらあああ!」

 アウルは遂にその槍を投げた――空を切り、そして――

「ガアッ……―――――――!!」

 瞬時に喉を突き破り、叫ぶための器官すら失い、怪物は声無く膝を折り、前のめりに倒れて行った。地に衝撃が走り、苦しみを体現するかのように揺れ動く。砂埃が舞い散った後には、ただ物言わぬ肉塊が横たわるのみ。

 

 くるくると縦回転、そして綺麗に地面に降り立つとアウルはライザにその顔を向けた。

「一撃必殺……くうっ、こんなでかいの相手にガシッと決める俺は、このグループの次期リーダーって所じゃねえかな!?」

「いや、一撃で倒れる見かけ倒しの雑魚だっただけだろう。私としては至極残念だ」

「ああそう……」

 アウルはさらりと流されて不貞腐れるように屈むと地面に丸を書きだした。

「俺は評価してるよ」

 いつの間にやら座っているネーヴェはアウルをフォローするが、本人はいじけたままになっていた。

 

「しかし、邪晶石というのは人をこんな醜い物に変えるのか」

 ライザの興味は張りぼてのような怪物よりも、その原因へと移っていく。いつの間にやら邪晶石は斧ごと消えている。おそらくはこの怪物の中にでもあるのだろう。

「力を与えるなどという物は大抵このような末路が待っていよう」

 外套の男はそれが全く不思議では無いとするが如く、淡々と物を言う。

「邪晶石とやらは残っているかもしれん。回収する」

「ああ……回収作業任せていいか?」

「構わん。何もする間が無く退屈だった」

 外套が風に揺れる。男は怪物を眺め、その源を見極めんとする――すぐに彼はそれに気づいた。

 

 

「これは……再生か」

「「「再生……?」」」

 他の三人は互いに顔を見合せる。男が即座に怪物から距離を取ったのを見ると、他の三人も急ぎ離れる。再生、その言葉の意味は……分からないような者達ではない。

「ちょっと待て、こいつ再生するのか!?」

「ああ……古の魔導兵器が如く、コアを潰さなければ動き続けるとかそういった類かもしれん」

 目の前の、一時は死体であったかもしれない怪物から音が聞こえ始める。それはもう出せないはずだった物。

「―――グ、ゴ」

 周囲の地面にひびが入ると、その腕が動きだし再び地を押さえつける。顔が上がる――目が合う。その目は怒りと殺意に満ちている――先程以上に。

 

 

「ゴオオ……」

 その声は低く響き、耳を裂くような不快な感覚を味あわせる。アウルはその喉元を再び裂いてやろうと飛び出そうとして――気付いた。

「あ」

 ふと向こうの壁を見るとそこには突き刺さった槍。

「あ、あああああああ!! やっべぇ!!」

 思わず頭を抱えるアウル。少し前の威勢は何所へやら、情けない叫びが不快な呻きと混じり合う。

「ならば私が……」

 

 

 途端、黒い線が地を駆けた。

「何!?」

 ライザは目を見開いた――地を突き進む瘴気は彼女を飲み込まんと迫り来る。慌て横に飛び出すも、瘴気はまるで自ら意思を持つかのように針路を変え、正面へと躍り出た!

「馬鹿な――あああっ!?」

 瘴気はライザを飲み込み、炎のように激しく燃え盛り始める――アウルは反射的に飛び出すと瘴気を振り払いながら彼女の手を掴み取り、瘴気から引きずりだそうとするが――

「ライザ!」

「馬鹿、アウル――やめろ! お前まで……」

 

 その瘴気の炎の向こう側、怪物は再び地を響かせるように腕を振り下ろす。ネーヴェはそれを防ぐべくまた魔法を唱えようとするが、ただ腕を振る行動と魔術の詠唱では速度が違いすぎた――再び黒い線が走りだし、それは増幅し残る二人に迫り来る!

 遅れて打ち出された氷は瘴気を消し去らんとと果敢に飛び込むも、それは無残にも溶け去った。ネーヴェは声を出す事も無く地を見つめる。

「俺達の終極点がこんなに早く来るとはな」

 外套の男は瘴気を避けるべく動くも、ライザの時と同様に瘴気はそれを追尾する。

「遂に死か……長く生きたものだ」

 そして、彼らは瘴気に飲み込まれ――

 

 

 その瘴気は突然消え去った。

「……何だ」

 意味も分からず顔を上げると、他の三人も何が起きたか分からないと言わんばかりに周囲を見渡す。そしてそれは怪物も同じようで、勝利を掻き消された事実に怒りの声をあげようとする。

 

 

「邪悪なる魂よ、ここで俗世に別れを告げよう」

 不意に流れるような声が響いた――その声の正体が分からないままネーヴェはただ怪物を、そして突如その前に現れた人物を見ていた。怪物が再び腕を叩きつける、しかしそれより先にその人物は動いた。

「何を……」

 その手が何かを空に刻んだと思うと、光の線が怪物を貫いた。呆然とするネーヴェの背後でまた別の何物かの声が聞こえる。

 

 振り向くと、黒衣を纏った何者かが視界に入った。いや、何者か、というほど未知の人物では無い、一度だけだが確かに見た事のある……

「……お前は」

 

 その女性の詠唱は終わった。怪物のの周囲に雷球が現れるや否や、その雷球から放たれた光線が怪物を貫く! 更に雷球は数を増し、四方八方と言わず全てを包むように……そして怪物の全てが隠れた時、視界の全てを焼ききるほどの光が放たれたと思うと……

 

「これで終わり、ね」

 気づけば、怪物は消えていた。何が起こったか、その全てを判別する間もなく戦いは終わりを告げていた。

 

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